本物の「トランスフォーメーション」とは?

投稿者:nakajima 投稿日時:日, 2020-11-08 00:06

 この秋、筆者はいくつかのアワードの審査委員や審査委員長を務めた。「デジタルトランスフォーメーション」や「SDGs」の発想がどこまで意識されているかを気にして発表を聞いていたが、「トランスフォーメーション」は浸透していたが、SDGsはほとんど痕跡が見られなかった。しかし、「トランスフォーメーション」もいくつかは「なんちゃってトランスフォーメーション」と首をかしげるもののような気がした。
 「SDGs」はただ、「まだ浸透していない」と嘆く以外にない。最近では小学校の正面のゲートの前に「SDGs」の花文字が飾られるのを見かけるほどに年少から大学生くらいまでは理解している様子だし、経団連が「SDGs推進」を叫ぶくらいなので、経営者クラスは認識が深まっているようだが、最も活動的なビジネス中堅の関心が薄いのだろうか。
 一方の「デジタルトランスフォーメーション」は積極的に取り組んでいるように見えるものの、「これって、ただのIT化に過ぎないのじゃないか」と思えるものも混じっていて、議論になった。
 デジタルトランスフォーメーションについては、いつものように米国のコンサル手イング会社の難しい定義があるが、これは気にすることはないだろう。会社のビジネスモデルを根本から作り直すことが「トランスフォーメーション」である。いまに始まったことではない。社会の価値観が変化し、新しい技術が登場し、これに合わせてビジネスモデルを大胆に変えることだ。古くはセブンーイレブンが小売チェーンから、サービス全体に取扱商品を広げて街の情報ステーションに変わり、ヤマト運輸が法人間の輸送会社から翌日配達という奇跡の配送システムを構築して個人向けの「宅配」という新サービスを提供する会社に変身したのは、トランスフォーメーションのモデルである。
 もっと典型的なのはJR東日本が一見は紙の切符の代替のようなICカードを発行して交通系電子マネーに発展させて、輸送会社からインフラ変革推進会社に変わったのが挙げられる。こういう変化を引き起こした原動力がデジタル技術なのは、その性能向上スピードが猛烈で、既存システムを壊し、代替する能力があるからだ。ビジネスモデルを変える強力な技術は、現在ではスマホ、クラウド、ビッグデータ、AI分析技術、ロボットなどのデジタルなので、これまでと区別するために「デジタルトランスフォーメーション」と呼んでいるが、変化を起こす本質は変わっていない。
 オンライン書店によって既存の書店ビジネスを壊した後、書籍以外の物販や映像情報のサービス会社へとビジネスモデルを進展させ続けているアマゾンももちろんそうだが、米国に参考例を求める必要はない。日本でも社会まで変革する企業のトランスフォーメーションが続々と起きている。
 そういう物差しでみると、応募してくる「トランスフォーメーション」の内容がもう一つなのである。単にITを適用してコスト削減した、社員を減らした、社内組織を変えたという「改革事例」に止まっているものが多かった。
 スマホが社会全体に行き渡り、銀行をはじめとした金融サービス、製造業、SDGsによる社会の進む方向の劇的変化など、ビジネスの条件はがらりと変わりつつある。新しいビジネスモデルが生まれる土壌が熟しつつあるのだが、それを感じさせるものが見えなかった。もしかするとこうしたアワードとは別のところで進展しているのかもしれない。それに期待したい。