「トランスフォーメーション」~コロナで迷い払拭を

投稿者:nakajima 投稿日時:火, 2021-01-12 09:58

2020年に置き去りにしたかった新型コロナウイルスは、21年になって火勢がいよいよ増してきてしまった。「明けない夜はない」はずの夜明けはいつ来るのか? しかし、落胆している暇はなく、21年に持ち越した課題に取り掛かるべきだろう。コロナ以前から課題として見えていたはずだったものである。トランスフォーメーション。あれこれと反対する理屈を並べ立てて先延ばしに来たものが、コロナに襲撃されて本腰を入れて着手せざるを得なくなったことが沢山ある。
代表的なものがリモートワーク(テレワーク)である。筆者は3年前まで日本テレワーク協会の「テレワーク推進賞」というアワードの選考委員を5年ほど務めていた。選考委員を初めて引き受けた年は、「育児のために」「親の介護のために」という理由ならば週に1日、在宅でオンライン従業できる、という企業が先進的だとされていた。もちろん、若いベンチャー企業では革新的な試みがあったが、大企業は動きが鈍かった。
しかし、深刻な人材不足が進行すると「出産退社」「介護退社」を防ぐことや優秀な人材を繋ぎとめるため、「自由な勤務時間」「自由な勤務場所」という考え方が起こった。大手企業も働き方の見直しを検討し始めたところに、総務省が「テレワーク」を推奨し、さらに東京五輪の準備のために「テレワークの実験」「ワーケーションの推進」が提起されると、腰が重かった企業経営者も前向きになった。2018年の「テレワーク推進賞」の内容は様変わりになった。さらにコロナで一挙に進展しつつある。
それでもなお、2018年ころは「自分のところの業務はテレワークにはなじまない」と「検討」することすら拒否する管理職者が大半で、テレワークは一部の先進的な企業、先進的な職場での限られた勤務形態と半ば諦めかけていた。そこへコロナの直撃である。かねてテレワークのメリットとして地震などの大災害時と並んでパンデミック時の事業継続の手段としての有効性を挙げていたが、その予測通りになった。
会議はほとんどがオンラインになった。自宅からオンラインで同僚や上司、取引先とつないで事務連絡や業務指示、相談、商談交渉などを実行できる。「実際に会った方が能率は上がる」と主張してコロナの勢いが衰えるとオンラインを捨てて元に戻ろうとする動きも少なくないが、これは消えてゆく習慣の最後の残影だろう。
かつてテレワーク推進者は高いテレビ会議の費用を「出張経費に比べれば安い」と説明していたが、テレビ会議の料金は急速に低下した。もはや経費の問題ではない。オンラインなら、何度でもどこからでも会議や打ち合わせに参加できる。移動を考えれば一日に3、4件の商談が進められれば能率よく進んだ方だが、オンラインならば移動せずにその倍は打ち合わせや商談ができる。不都合なことも今は多数指摘されているが、これはルールを変え、習慣を変えることで改善して行ける。
2020年後半、東京では転出人口が増えて人口減少が始まったそうである。在宅ワークするなら、郊外の広い住居に転居した方が良いと考えるビジネスマンが増えたのが原因だそうだ。買い物もネットスーパーやネット通販を使って街中に住んでいなくても間に合う。新聞も電子新聞で、家の中に古新聞や広告のチラシが山積みになることもない。
リモートワークにつられていろいろのものがオンラインで済ませられるようになってきた。ショッピングも、医療の一部も変わり始めた。教育や研究もオンラインで世界とつながれば、国内の有名大学を目指すのが価値のないことになるかもしれない。学校での教育ではなく、インターネットの中から学習する新しい形が生まれるだろう。
こうした企業や消費者、国民の変化は、新しい需要を生み出し、ビジネスやサービスはその需要の変化を求めて変わって行かなければならない。トランスフォーメーションである。このトランスフォーメーションは市場を変え、企業の盛衰を決定づける要因になるはずだ。この市場の変化を肌で感じ、新しいビジネスやサービスへと方向転換するためには、テレワークを避け、従来の価値観で古い仕組みの業務を実行しているような企業であってはならないだろう。目の前に開かれつつある新しい市場をいかにして捉えられるか。21年はポストコロナの新しいビジネスの形をつかむ、そのスタートの年である。「リモートワールド」に向かって、もう迷っている場合ではない。