正しい「ワーケーション」を普及させるには?  

投稿者:nakajima 投稿日時:日, 2021-03-07 23:44

 内閣府が音頭をとって「ワーケーション」の普及活動が展開されているが、何か違和感を覚える。オフィスに閉じ込められて仕事をしてきたこれまでの働き方を変えて、オフィスを離れてリゾート地域でもリラックスして仕事ができ、生産性も上げるのではないかと期待されているのだが、どうも、どこか筋が違っているのではないか、と思えるのである。筆者は南紀白浜などの「ワーケーション」に熱心な地域も訪れたが、このままでは「ワーケーション」は期待外れに終わり、しぼんでしまうのではないかと心配である。
 「ワーケーション」の言葉がない時代から、同様の仕事の形態は個人個人が工夫して実現していた。沖縄でも都会から移住したクリエイターや技術者が、インターネットでリモートワークしている。テレビ会議サービスが手軽に利用できるようになったのも大きい。著名な経営者も移住して、本社の会議や日常の打ち合わせもビデオ会議で対応していると聞く。
しかし、これは話題になっているワーケーションの定義とは異なっている。「ワーケーション」の定義は「ワーク(仕事)」と「休暇(バケーション)」を融合するものだから、移住してしまったのでは定義から外れてしまう。ただ、定義の方が実態に合わないだけである。働き方改革が目的なので、何も観光地でバケーションしながら働くのは必須ではない。
ワーケーションの源流は「テレワーク」と「ワーク・ライフ・バランス」である。
 テレワークはアルビン・トフラーが「第3の波」で予言した未来だった。エネルギーコストは上昇し、情報通信コストは急激に下がる。エネルギーを使う通勤や移動のコストはいずれ情報通信でビジネスや社会活動するコストを遥かに上回り、経済原理からテレワークの時代が訪れると予言した。今日では環境・衛生問題がさらにテレワークを加速する。
 ストレスの多い企業社会では働く人の精神の健康が課題として浮上してきた。解決法の一つが「ワーク・ライフ・バランス」で、仕事のストレスを緩和する日常生活の工夫が叫ばれた。その手法にリゾート地でリフレッシュしながら仕事に当たることが提案された。
 なかなか定着しなかったが、一挙に注目されたのは東京オリ・パラである。20年の6月から9月まで首都圏が混乱しビジネスがストップする懸念がある。内閣府と東京都がこの期間、ビジネス拠点をリゾート地に移すアイデアを提案した。この作戦に観光地の自治体が乗った。さらにコロナでインバウンドが全滅したため、インバウンドのほかに観光の柱を求めた観光地が加わって、一部でワーケーション誘致のブームが起きているのである。
 筆者の「違和感」は、ワーケーションの主役は働く人であるのに対し、肝心の働く人がどういう形を望んでいるか、ちっとも議論がされていない。働く人が本当にワーケーションを望んでいるのだろうか。どうにもサプライサイドの議論が空転しているのではないか、不安を覚えるのである。ただ、働き方改革が必要で、その一つにワーケーションがあるのも事実である。ここは、じっくりと働く側の立場に立って、ワーケーションを考える機会を持ってみたい。