始まった日本産業の巨大なトランスフォーメーションに備えよ

投稿者:nakajima 投稿日時:日, 2021-05-09 08:19

コロナに目を奪われているうちに、見逃してはいけない、大きな産業の転換の予兆が出現している。日本の中核をなすガソリン自動車産業の崩壊である。この予兆に正しく対応しなければ、コロナを克服しても日本産業界は危機的な未来に直面することになる。
大型連休前の4月後半以降の10日間に、日本産業の歴史を画する3つの大きなイベントがあった。記憶すべき10日間だった。情報産業界も、来るべき変化に適応すべき変化が必要になる。
まず、米国時間4月16日開催の初の日米首脳会談(リアル)でのCO2削減の合意である。次に4月19日プレス向け発表から始まった上海
モーターショー。3つめが4月22日の今年開催予定の東京モーターショーの中止の発表である。
日米首脳会談では2030年までの日本のCO2の削減目標を46%で合意した。日本の計画では2030年までに45%削減だったのでわずか1%の上方修正だが、産業界は激しく反発している。的外れなテレビの解説者は「産業界の現状を無視した米国の要求への迎合だ」と菅首相を批判していたが、とにかく政府を批判していれば無難とする安易なコメントだった。
事前の予測では米側は2030年までに50%の削減を日本に要求するとされていたが、その通りだったのだろう。米側は日本産業界の反発で菅政権が追い込まれるのを回避するように、従来方針の1%上乗せで折れたのだろう。しかし、菅首相は首脳会談後の発表で、「46%の削減」で合意した、と言いながら、「さらに50%の高みを目指して」と説明を補足した。米国には「50%」を裏側で約束し、日本の産業界の反発を考慮して表向きの発表を46%にするという合意だったのではないかとうかがわせる。
当然、今後の日本の政策は水面下にある「50%削減」に合わせた厳しいものになるだろう。CO2削減の最も効果の出るのはガソリン自動車の抑制である。電気自動車への転換のために不可欠な再生エネルギー進展のための振興策である。水素の採取技術、配送技術の開発も急がなければならないだろう。
上海モーターショーは電気自動車のオンパレードだった。海外諸国は一気に電気自動車にトランスフォームしている。「自動車大国」のはずの日本メーカーの存在は霞んでしまった。ガソリン車の肝は内燃機関とそこで得られたパワーを車輪に伝える複雑な機構と制御技術である。それが電気自動車では蓄電器とその電気を車輪のモーターに伝える簡単な構造になる。部品の種類が変わり、部品点数も大幅に減少する。
この劇的な変化の前例は、規模は小さいが、レジスターに見ることができる。機械式レジスターが電子式レジスターに取って代わられた。機械式の製造技術者は失業し、工場は電子部品の調達と従来に比べて簡易な組み立て作業に変わった。技術の中身が変わり、下請け工場もガラリと変わったのである。同様の変化は計量器など多くの製品分野でも起きた。
最後は東京モーターショー2021の中止だ。表向きの理由はコロナの影響で、世界各地のモーターショーもコロナによる中止を発表している。しかし、コロナは都合の良い理由で、東京の場合は、日本メーカーの電気自動車への転換の遅れが理由だろう。上海のショーに出品された海外メーカーの電気自動車の進展に驚愕し、追いかけて、日米首脳会談である。日本市場の電気自動車シフトの加速が要求され、計画は前倒しになるだろう。国際競争に勝てる電気自動車開発を急げと激しく尻を叩かれている。「2035年までにガソリン車の国内での新車発売の禁止」と期限も設けられた。それまでに巨大自動車メーカーのすそ野に広がる下請けの大企業群を整理しなければならない。
東京モーターショーの中止は、電気自動車開発のための時間稼ぎの意味合いもあるのではないかと勘繰られても当然だ。
巨大な国内の下請けのすそ野を維持する方策としては、内燃機関方式を維持し、パワーを伝える複雑な機構を残す手法もある。それが水素エンジン車の開発の加速である。自動車工業会のトップが水素エンジンの開発に言及しているが、これは下請けのすそ野が動揺しているのを当座、押さえるのが狙いかもしれない。
情報産業は社会や産業、企業、生活を進展させる「サポート産業」である。産業や社会が大きく転換するのをにらんで、ニーズの変化に対応できるように情報技術を磨き、日本産業のスムーズなトランスフォーメーションをサポートしなければならないだろう。