歴史が証明する政治家の功績

投稿者:nakajima 投稿日時:水, 2021-09-15 11:44

 「一寸先は闇」というが、政治の世界というのは分からない。自由民主党の総裁任期切れの9月末には総裁選挙があるというのは既定事実で、現菅義偉総裁の立候補を軸に総裁選が戦われ、おそらく再選されるのではないか、というのがほとんどの人がぼんやり考えていた総裁選の構図ではないだろうか。唯一の波乱要因はコロナ感染拡大のあおりを受けた内閣支持率の急降下で、衆議院議員の任期切れに伴う衆議院選を自民党は菅総裁の看板で勝てるのか、という若手議員たちの不安の声だった。
 それが9月初め、突然の総裁選不出馬の表明である。
 それまで菅総理にコロナ拡大の責任を取って辞任を要求していた野党までが「コロナを放り出して辞任するのは無責任の極み」などと言い出す始末である。まさか本当に辞任するとは思ってもいなかったのであろう。
 しかし、振り返ればわずか1年間で「デジタル庁の設置」「カーボンニュートラル実現の前倒し」「ケータイ電話料金の引き下げ」など、これまで利害が錯綜し、なかなか前に進めなかった懸案を大胆に決定し、次の時代の土台作りを敢行した。
 多くの反対を押し切って東京五輪(オリパラ)も実現した。現在は百論あるかもしれないが、後世、歴史を振り返った時には、困難を乗り越え、聖火を途絶えさせなかった快挙、という評価が定着するだろう。五輪は国内行事でなく、国際行事である。国内で不興を買おうとも、国際的責任を優先したことは長い目で日本の高い評価につながるだろう。
 しかし、最も精力を削がれたのはコロナとの戦いだろう。
 だれが総理大臣でもコロナの感染拡大を防ぐことは難しかっただろう。しかし、企業でも何かの事件で社内に不満が鬱積したときには、最高責任者の社長に非難が向く。その事件を防ぐことはだれでも難しく、直接の責任が社長になくても、そういう時に責任を取るために社長がいるのである。
 総裁選に敗れ、総選挙に敗れて退陣するのは「無様」と言えるが、菅首相はその前に自ら退陣を表明した。だれもが直前まで予想しない、唖然とする退陣表明だった。おそらく本人にも不本意だったはずだ。家族の進言か何か、きっかけは分らないが、「辞めさせられる」のではなく、自らが「辞める」ことを決断した。未練を見せずに、一夜にして態度を変えた潔さは、総理の事績の評価にプラスの追加ポイントを与えて良いのではないか。
 いずれにしろ政治家の評価は後世の歴史家が決める。いま即断するのは僭越かもしれない。
 ただ、狭く我々の業界に絞り、これまでスピードが遅すぎた日本の情報化進展の観点で評価すれば、菅内閣は情報化推進で悪戦苦闘してきた志ある人たちの背中を押し、今後のデジタル社会の基盤づくりに踏み出すきっかけを作った。次の内閣にも、この流れを絶やさずに、さらに進展させてもらいたい。