国家のこと、地元のこと

投稿者:nakajima 投稿日時:金, 2021-11-05 10:39

 最近、スマート農業に挑戦している高知県を訪れてバスガイドの方から意外な話を伺った。あるいは有名な話で筆者だけが無知だったのかもしれない。
 戦争直後の大政治家、吉田茂首相は高知県選出の衆議院議員で、生まれも育ちも東京だが、父祖の故郷である高知を愛して立候補地を選んだというのである。驚いたのは、吉田茂は地元高知の政財界からの陳情を一切受け付けず、宿毛市の住居に面会に押し掛ける有力者たちにも「自分は国家のために働いているのであって、一地方の利益のためには動かない」と言って、頑固に門前払いしたということである。
さらに驚いたことには、「国のために働く吉田茂」を高知県民は誇りに思い、国会に送り続けた。一地方の利権誘導よりも、国家に目を向けていた。バスガイドの方は、誇らしげにこの高知県民の姿勢を語ってくれた。
 それを知った後、日本のデジタル化の後れを憂い、超党派でデジタル化推進のリード役を果たしている平井卓也候補が選挙区で敗北した結果を目にしたのは大変、残念である。平井議員はIT関係の法案を超党派の国会議員に呼び掛けて共同提案し、議員立法で成立させてきた。行政機関に任せれば5年はかかるものを議員立法でスピードアップし、1年足らずで国会を通してきた。ITやデジタルを最も理解している政治家だと思われている。比例区で当選したものの、「弱い」と言われていた選挙区では苦杯をなめた。国家のために心血を注ぐことを地元では十分に評価してくれなかったわけだ。
 平井議員は、JASPAとは縁が深い。毎年の賀詞交歓会や年次総会には必ず顔を出し、国のデジタル化(当時はIT化と呼んだ)の方策について意見交換を行ってきた。その際に「国のIT化を一生懸命やっても、選挙での票に結びつかない」と嘆いていたが、IT大臣、デジタル大臣と2度の大臣を務めた後の今回の選挙でもその嘆きは解消されなかった。
 結果として議席は確保した。比例選出の制度があるのは意義があると実感させられた。平井議員には今後も後れてしまった日本社会のデジタル化推進に力を注いでもらいたい。
 それにしても、「地元のことより国家のことが自分の仕事だ」という政治家を支援した高知県のようには、ならないものだろうか。