「ソフトウェア業基準法(仮称)」のご案内

投稿者:jaspanet 投稿日時:金, 2010-01-01 00:00

全国ソフトウェア協同組合連合会(JASPA)
会長 中島 洋
専務理事 横尾 良明

1.はじめに

日本の産業分類における「391ソフトウェア業」に着目して、その「ソフトウェア業」における、長年にわたる、種々の課題の解決と、更なる発展のために「ソフトウェア業基準法(仮称)」を制定することを提案いたします。

2.「ソフトウェア業基準法(仮称)」の制定の提案内容

「建築基準法」を参考にしながら、ソフトウェア産業側の自主規制としての意味合いが強くはなるが、公的規制として「ソフトウェア業基準法(仮称)」を制定し、業界内での運用をすることを提案いたします。

ソフトウェア業基準法(仮称)の目的

この基準法により、①情報システムの信頼性の確保、②ユーザとの取引の透明性の確保、③業者間取引の統一基準の確立、を行うものです。つまり、目に見えないものを作っているソフトウェア産業の「可視化」が図られ、ユーザと受託者及び協力会社の間の種々の「問題」や「課題」の多くが解決するものと信じます。

ソフトウェア業基準法(仮称)の内容

この基準法では、下記のように、共通フレームに準じた各プロセスで必ず作成すべきドキュメント(資料)を規定し、これらのドキュメント(資料)の作成(/変更)においては、作成日付、作成者役職、作成者氏名、作成者の所属、変更履歴、監修責任者氏名を必ず記述することとし、さらに、これらの資料は作成者の所属場所において、関係者が必要において閲覧できるような形で保管することを規定(義務化)するものです。

共通プロセスで定義されているドキュメント(資料)…主なもののみ

1. 1取得プロセスで作成するもの
(1) 提案依頼書(RFP)
(2) 検収終了報告書

1. 2供給プロセスで作成するもの
(1) 提案書
(2) 契約書
(3) プロジェクト進捗状況報告書
(4) レビュー及び評価報告書
(5) 納品及び検収依頼所

1. 3企画プロセスで作成するもの
(1) システム化計画書

1. 4要求定義プロセスで作成するもの
(1) 業務要件/機能要件/非機能要件の定義書
(2) スケジュールに関する要件の定義書
(3) 要件の合意書

1. 4開発プロセスで作成するもの
(1) システム方式設計書
(2) 業務詳細設計書
(3) ソフトウェア方式設計書
(4) ソフトウェア詳細設計書
(5) テスト設計書・報告書
(6) 構成管理記録書
(7) 品質を保証する報告書

1. 5運用プロセスで作成するもの
(1) 運用プロセス実施計画書
(2) 運用テスト計画・報告書
(3) 運用マニュアル
(4) 業務運用評価報告書

1. 6保守プロセスで作成するもの
(1) 保守プロセス実施計画書
(2) 保守マニュアル
(3) ソフトウェア修正報告書

以上

参考資料

1.日本の産業分類

大分類G-情報通信業
39情報サービス業
391ソフトウェア業
3911受託開発ソフトウェア業
3912組込みソフトウェア業
3913パッケージソフトウェア業
3914ゲームソフトウェア業
392情報処理・提供サービス業
3921情報処理サービス業
3922情報提供サービス業
3929その他の情報処理・提供サービス業

2.情報サービス業の売上・従業員数の状況

JISAの発表によると、情報サービス業の平成20年度の速報値は以下のとおり。
・企業数13,121社
・売上高17兆9131億円(内、同業者売上は2兆7055億円で約15%)

ソフトウェ業務 売上高12兆1,400億円(67.8%)
情報処理・提供サービス業務 売上高 5億7,722億円(32.2%)
・従業員数856,695人(売上@2,091万円/人)

ソフトウェア業 618,050人
情報処理・提供サービス業 238,645人

一方、「情報サービス産業白書2009」によると、約20%は同業者売上であり、主要顧客の70%が同業者である。

3.産業構造審議会の記述について

産業構造審議会が平成18年6月にまとめた、「情報サービス・ソフトウェア産業維新~魅力ある情報サービス・ソフトウェア産業の実現に向けて~」の中で、ソフトウェア産業に対する公的規制のあり方について検討・記述されている。

それによると、『建築業界に比べて、①製造プロセスの標準化が遅れていること、②安全性・信頼性(建築業における耐震性能、耐火性能、耐用年数等)とこれらに影響を与える諸要素(建築業における材料強度、構造等)が合理的に計測困難であること、③ユーザ企業の安全性・信頼性に与える影響が情報システムに比べて大きく、提供業者のみを規制の対象とすることで情報システムの信頼性・安全性を担保することが難しいこと、④最低限求められる信頼性・安全性の水準が情報システムの利用目的に応じて多様であること、という違いがあるため、建築業と同様の規制を情報システム一般について投網のように課すことは適当でない。』と、ソフトウェア業が建築業と同じでないから、公的規制を設けられないと結論付けている。

4.「共通フレーム2007」の記述について

一方、「共通フレーム2007」の冒頭の「ソフトウェア開発と取引の諸問題」の中で以下のように記述されている。
『これまでソフトウェア製品そのものについては、かなり標準化や規格化が進み、品質や生産性の向上が図られてきている。しかし、それを作り出す人間の作業を標準化して作業品質を高めようとすることは、あまり行われてこなかった。むしろ人間が行う作業の標準化を忌避する傾向さえうかがわれた。
もちろん、ただ標準を作ればよいというわけではない。それを生かすことが本来の目的である。しかし、「プロダクトの品質はプロセスの品質から」といわれるように、作業プロセスそのものの品質が、製品の品質に大きく影響を与える。目に見えないソフトウェアの開発及び取引では、特にそれが望まれるところである。』

5.ソフトウェア業の問題点と課題に対する解決度について

以下に、ユーザと受託企業及びその協力会社間の取引に伴う現実の問題点や課題を上げます。それらのことが解決されスムーズに行われればソフトウェア業が更なる発展をするものと考えます。

<ユーザ、受託者及び協力会社の間の現状の問題点と課題及びその解決度>
その必要性を認めているからこそ、ユーザと受託者のあいだの「モデル契約書」を作ったり、開発と取引の基準である「共通フレーム」を作ったりはしているが、いっこうにその利用が進まないのが現状です。
元請企業などが、会社ごとに作っている従来の契約書や開発基準を、それぞれが有用性を主張して、ばらばらに利用しているのが現状です。それでも、これら自社の独自基準を持って運用している元請企業などはまだ良いとしても、中小企業などでは、自社のモデル契約書や開発基準などを用意していないのが実態です。このような背景において、ソフトウェア業に存在する問題点や課題を以下にまとめました。その上で、今回の提案による解決度を記載いたします。

表:ソフトウェア業の問題点・課題と「ソフトウェア業基準法(仮称)」提案による解決度
○:解決、△:やや解決、×:解決しない

ソフトウェア業の問題点 解決度
(1)ユーザ企業が受託者に対して困っていること  
企画提案力が不足している(上流技術者がいない)
プロとしての技術力が不足している
プロジェクトの推進力が不十分で納期が守られない
「対応できる」と約束したことができていない
こちらの指示への対応以上の仕事をしていない
価値が高い(費用対効果が悪い)
見積もり金額の妥当性が不明
セールスと実務担当者の意思が違う(内部コミュニケーション不足)
業務内容を理解していない(SEの実績・経験不足)
費用の追加を要求してくる(作業が非効率)
プロジェクトの完成責任者が誰であるか不明である
依頼する業者(技術者)によって出来映え(品質)が違う
納品されてもシステムが現場で使えない(「動かないシステム」)
マルチベンダのとき、ベンダごとに作業標準やプロセス標準が違う
ユーザ企業、ベンダ企業、その協力会社の役割と責任がいつも曖昧である
発注先企業が倒産した(発注業務が続けられない)
(2)受託企業がユーザに対して困っていること  
ユーザの要求内容がまとまらない(見切り発車せざるを得ない)
ユーザ側の担当者・責任者(ステークホルダ)がはっきりしない
システムやソフトウェアに対する理解が無い(無理難題を言う)
契約書をくれない(ユーザ側としてSLAに心配がある)
検収をしてくれない(ユーザ検収の大切さを理解していない)
金を払ってくれない(ユーザが納品物に満足していない)
値引きを要求する(定価、価格標準が無いことによる)
ユーザ企業が倒産した ×
(3)業者間取引(受託者と協力会社間)での問題点と課題  
<発注者側に対して困っていること>  
SEの技術力が低い
納期守れない(開発基準が無い)
品質が悪い(SEの個人プレーが多い)
価格が高い
実績がないから心配だ(発注先の開発能力の客観的評価基準が無い)
セキュリティー・個人情報保護が保たれるか心配だ
受託条件や受け入れ作業手続きの共通基準が無い
受注企業が倒産した(業務が続けられない)
<受注側が発注側に対して困っていること>  
要求・指示内容があいまい(階層構造の弊害でもある)
価格が低い(利益優先、無理を言う)
不当な値引きを要求する(発注側の一方的な優位性)
支払いサイトが長い(階層構造の弊害)
作業がスタートしているのに契約書(発注書)がもらえない(悪しき風習)
金を払ってくれない(契約書や納品、支払いの取り決めの不備)
いきなり発注の中断・取り消しがある(階層構造の弊害)
発注企業・中間業者が倒産した(作業代金が回収できない)

6.建築基準法の規定項目<参考>

第1章 総則
第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備
第3章 都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途
第3章の2 型式適合認定等
第4章 建築協定
第4章の2 指定資格検定機関等
第4章の3 建築基準適合判定資格者の登録
第5章 建築審査会
第6章 雑則
第7章 罰則