頑健な肉体と精神
聖路加国際病院の日野原重明理事長の講演を聞いた人が大笑いしてその時の日野原さんの言葉を紹介してくれた。「100歳を越えると徹夜がきつくなった」のだそうだ。
「老害」という言葉は、日野原さんには無縁なのだろうか。理事長として煩瑣な事務をこなしているのだろうか。あるいは有能なスタッフが脇を固めているのだろうか。いろいろ聞いてみたい気もするが、そのどの質問を発するよりも前に、100歳を超えてなお、かくしゃくとし、階段も何段飛びかで駆け上がっていくので、若い医師も追いつけないというようなエピソードに圧倒されてしまう。頑健な肉体には健全な精神も宿るのだろうか。
翻って、自分の身を考えてみると、どうも何かを邪魔しているのではないか、と反省せざるを得ない。ジャーナリストとして駆けまわっていた若いころは、インタビューする相手は皆、年配の経営者だった。ビジネス歴も長く、経験も豊富だった。成長を支えた成功談よりも、業績が落ち込んで血のにじむ思いで従業員を削り、金融機関の足下にすがり、さらに、深夜まで屋台のそば屋でようやく空腹を満たして、明日の未来があるか不安な夜を送った苦労話が興味深かった。
苦難の中を先頭を走って、生きるか死ぬかの土壇場を潜り抜けてきた、その後の成功である。
最近になって日野原さんの話を聞くにつけても、果たして、自分にそんな根性があるか、自信がなくなる。そういう頑健な人、度胸と努力の人が早く、自分の代わりに経営をリードしてくれないか、と無い物ねだりをしてしまう。日本の国力の衰え。急速な技術革新の進行。米国を中心にした新しいサービスモデルの輩出。こういう急激な変化に対応できるようなリーダーの登場を切に望みたい、と思う。
Jaspa編集長 中島洋ブログ
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