統一球に見る「秘密主義」の問題点

投稿者:nakajima 投稿日時:木, 2014-04-24 17:10

 米国大リーグでも一時期、70本以上もホームランを打つ選手が出てパワーのすごさに驚いたものだったが、昨年のプロ野球セ・リーグのウラディミール・バレンティン選手の60本塁打にもびっくりした。年々、着実に本塁打数を伸ばしてきたので、60本も納得したいところだが、どうも引っかかったのは、反発力の大きな「統一球」の影響である。米国もその数年は反発力の大きなボールを使っていたようで、ボールを変えたら、それほどホームランは出なくなった。バレンティン選手も飛ぶボールのおかげだったのではないか。
 今年、飛ばないボールでどれくらい打つか、少しは判断材料になるかと思っていたら、なんと、今年も昨年のボールを引き続き使用しているのだというから、あきれ返った。開幕当初、巨人の抑えのマティソン投手が軽くライトに流し打ちのホームランを打たれた。解説者が「飛びすぎですよね、あれは」と疑問を挟んでいたが、今年は飛ぶボールは使っていないはずだから、とその場は収まった。しかし、実は・・・と飛ぶボールをまだ、使っているのが明らかになった。
 理由は、まだ、在庫があるからだ、という情けない説明である。
 テストをすると、かなりの率で、規定の反発値よりも大きいボールが検出されているらしい。規定内に収まったボールも上限のところに集中していることが推測される。つまり規定内でも平均的には飛ぶボールを多用していることになる。
 どの球団でも条件は同じだから、という擁護論もあるが、他の年度との比較では、著しく公平を欠くのではないか。他の年度のホームラン記録との条件の違いが大きすぎる。その点では投手の方も公平を欠く。飛ぶボールの時代には、失点や防御率の記録は、かなり悪くなるだろう。
 コミッショナーがこれで事実上、辞任に追い込まれた。
 ただ、辞任に追い込まれた理由は、「統一球」の採用ではない。統一球が飛ぶボールであることを公開していなかったことである。最初から飛ぶボールになったことを説明するなら、年度をまたぐ不公平感は残るにしても、投手はそれなりに注意を払ってコースや球種を選ぶ、という努力の道は残される。しかし、事実を公開せずに特定少数の人たちだけが知っていて、対応策の道を狭める、というのは、どうしても納得がゆかない。それを今年もまた繰り返したのだから、反省しない人たちだ、と叱り飛ばさなければいけない。
 実は、我々のソフトウェア産業にも、同じ、秘密主義がまかり通っているのが問題である。JASPAで粘り強く取り組んでいる「ITソフトウェア基準法案」に関わる秘密主義である。
 「基準法案」の中で重要な事項の一つ、システム設計者、プログラム作成者など、作業工程に携わった技術者がその工程について作業者の記録を残しておく「コードサイニング」の義務化、というのが、秘密主義を打破する提案である。なぜか、作業者を秘密にすることを是とする関係者がいるらしく、我々の提案はなかなか日の目を見ない。ソフトウェアの作成過程を適切に開示できる仕組みがなければ、ソフトウェアの品質向上にもつながらない。飛ぶボールによるホームラン多発を前に、「ITソフトウェア基準法案」にまで思いが及んだ。