平成27年新春特別講演会の詳細報告

投稿者:jaspanet 投稿日時:水, 2015-01-28 15:06

日時 平成27年1月15日(木)
会場 グランドプリンスホテル高輪
出席者
  • パネラー
  •  コンピュータソフトウェア協会 会長 荻原紀男氏
  •  テレコムサービス協会 幹事会議長 鈴木良之氏
  •  日本スマートフォンセキュリティ協会 会長 安田 浩氏
  • コーディネーター
  •  全国ソフトウェア協同組合連合会 会長 中島洋

今こそ、ITコラボレーション~創造しよう!日本の稼ぐ力~


恒例になった「賀詞交歓会記念講演会」は、『今こそ、ITコラボレーション~創造しよう!日本の稼ぐ力~』というテーマで、コンピュータソフトウェア協会会長 荻原紀男氏、テレコムサービス協会幹事会議長 鈴木良之氏、日本スマートフォンセキュリティ協会会長 安田浩氏の3方をパネリストにお招きし、中島洋JASPA会長の進行で開催された。
IT業界の結束のために、ばらばらに活動している組織が連携をもって活動をパワーアップしようということを目標に、各団体のトップに現状の課題を指摘してもらうとともに、今後の連携の実現の可能性を話し合った。当面の目標は東京五輪をにらんだ各種の活動だが、経済産業省や総務省、その他省庁の関連分野を集めた「IT省」「情報省」の設立を目指す運動も起こす必要があるのではないか。行政施策の面でも、このところ存在感が薄れた印象があるが、強力な政策を打ち出すように促す仕組みが不可欠だ。日本のITの復活のためにも、政府の司令塔になる「IT省」「情報省」のような目に見える強力な組織の誕生を推進すべきではないか。議論は明確な目標を確認して終わった。

IT業界関連団体の連携強化を

冒頭、司会から、討論会を開くに至った経緯を説明した。
JASPAは昨年10月20日夕方、会長、事務局長、22世紀フォーラム代表など4人で、高市早苗総務大臣を訪問した。交流の深い高市代議士が総務大臣に就任したので、お祝いの挨拶だった。ちょうどその日は、小渕優子経済産業大臣が辞表を提出して、高市大臣が経済産業大臣臨時代行となって国会での答弁をした日だった。多忙な日だったので延期になるかと心配したが、キャンセルにもならず、予定通りにJASPAとして面談した。アポイントの時間がちょうど、総務、経産の両大臣を兼務している時間帯だったので「業界としては同じ企業、同じ問題で総務省、経済産業省の両方に同様のプロジェクトがあったりして戸惑うことが多い。高市大臣が両大臣を兼務している隙に、両省を合併して、一本化してもらうと有難い」と半分冗談、半分本気で申し上げた。
ところが、高市大臣は珍しく不愉快そうな顔をして「私たちのほうも一本化できていないけど、業界の方がもっとばらばらで、いろいろな団体があって、あれこれ要望して来るので戸惑ってしまう。業界の方も一本化してくれないかしら」と反撃されてしまった。
まさしく、その通りと、思わず納得し、反省したしだいです。
その直後に、CSAJ荻原会長から、われわれの業界がどうも行政から忘れられつつあるのではないか。存在感の薄いのは、業界がばらばらで個々の規模が小さい組織で個別に活動しているせいではないか。もっと発言力をもつために、まとまった組織を作るべきではないか、との意見をいただいた。それが、今日、このパネル討論会を開く出発点になった。
情報産業は明るい未来を切り開く、重要な産業である、とかつては自負をもち、また優秀な人材も多数、育ってきたが、いつの間にか、3Kだ、4Kだ、はたまた9Kだなどとブラック業界のようなイメージができて、今はなかなか優秀な人材を集めにくくなっている。これは業界だけの問題ではなく、日本社会の危機でもあると思う。こうしたイメージの払しょくなども個々の企業や団体単独では難しく、業界がこぞって取り組まなければ打開できないと思うが、いま現在は、その司令塔もみえない。いろいろな面から、業界が一緒になって取り組むべきことがあるのではないか。もちろん、限界や乗り越えるべき課題もたくさんあるのではないか。業界に関係した人々がベクトルを合わせて、一緒に日本社会を作り替えるような創造力をもう一度取り返して、十分利益もだし、そこで働く人たちもハッピーになれる道を作ってゆきたい。

賀詞交歓会などのイベント共催など身近なところから

この後、CSAJ、テレコムサービス協会、日本スマートフォンセキュリティ協会から、各業界が抱える問題点や解決策への取り組み、なかなか解決できない問題を業界の結束で打開するという考え方をどう思うか、などの意見をうかがった。
共通した課題としては、業界のイメージアップの方策はないのか、国内のIT人材教育の強化、深刻化するサイバーセキュリティ問題などが挙げられた。業界全体が結束するには、「連絡協議会」のような段階から組織を固めて「連合会」、さらには、合併まで視野に入れた「組織統合」のようなものもある、と議論が進んだ。
各団体の設立の趣旨や目的、加入メンバーの意識などに違いが大きいので、簡単には「統合」はできないが、できるところから共同で行うようにしてゆこう、という点では一致した。何ができるか、という議論では、まず、賀詞交歓会のような行事の共催、技術者や案件をマッチングさせるような交流の場、技術セミナーや学生説明会などの共催など、いくつかのアイデアが上がった。テレコムサービス協会のビジネスコンクールにJASPAが協賛しているが、こうしたイベントの共催も、もっと幅を広げて業界全体で開催するような道はないか、との意見も出た。

深刻になるサイバーセキュリティ対策を急ごう

サイバーセキュリティ対策も緊急の課題だという点で一致していたが、現状を分析してみると、事態は予想以上に深刻である。
特に、サイバー攻撃を加える側は、できるだけ目立つ場所で実行してくる。ロンドン五輪の時には五輪の運営システムが攻撃で使えなくなった。裏側で手作業でバックアップして表面的には支障が出ないで切り抜けたが、東京五輪ではさらに攻撃側がパワーアップするに違いない。2020年までにはスマホがさらに普及する。海外からの多数の来日客はそれぞれスマホを持ち込んでくることが予想される。このスマホにマルウェアを侵入させて、これを踏み台にして一斉攻撃をかけて来たりすれば、防衛するのはたいへん難しい。
ロンドン五輪の期間中の攻撃は4年前の北京大会の7倍だったと言われる。このペースで増加すれば、東京大会はロンドンから2大会後なので、7倍の7倍でざっと50倍の攻撃を受けることが懸念される。ロンドン五輪が2億数千万回の攻撃だったと言われるので、最悪でざっと100億回の攻撃が心配される。膨大に利用されるようになるスマホの脆弱性を衝かれると、もしかすると、もっと激しいかもしれない。
現在の予想でも、2020年のサイバー攻撃の防衛には8万人のセキュリティ対応人材が必要になると言われている。後残り5年でどうやってセキュリティ人材を育てられるのか。
すでに仕事を抱えているIT産業の現場の技術者を一時的に職場から異動させるのは不可能なので、大学生を活用する、というのが妥当性の高い方法ではないか。5年後に大学生というと、現在の高校生や場合によっては中学生が潜在的な戦力になる。対策は、中学生や高校生にセキュリティ技術を習得するようなプログラムが必要だ。業界の結束、共同歩調が望まれる。

東京五輪をセキュリティ人材育成の機会に

ただ、こうして育った若者たちに、東京五輪後の職場を確保しなければならない。
ハッカーというのは、ネットワークに長じた技術者のことだが、社会に役立つサービスや機能を提供する、あるいは攻撃からシステムを守る「ホワイトハッカー」として育てたつもりでも、誇りや充足感を維持できなくなれば、いつ、社会を攻撃する「ブラックハッカー」に転じてゆかないとも限らない。
若者の職場としては、企業の情報システムのセキュリティ面での脆弱性対策の仕事があるのではないか。現在、企業の情報システムは毎日、膨大な数のサイバー攻撃を受けている。重大なことは、その攻撃について、企業側が必ずしも自覚していないことだ。セキュリティ人材が絶対的に不足しているので、手が回らない。それで発見もしないので、攻撃されていることに気が付かず、重要な情報がどんどん盗み取られていることが心配だ。こういう状況を改善するには、人材の供給が必要だが、東京五輪を旗印にすれば、大量の人材育成の道が開けるかもしれない。
ただ、このセキュリティ技術者が社会的に高い地位を与えられないといけない。会社の中で専門家としての高いポジションを用意し、給料も高くして処遇しなければならない。そうすることで、勉学の意欲もわき、優秀な人材が産業界に供給されることになる。

もちろん、民間レベルだけでこうした施策を推進するのは限界がある。
政府の強力な支援が必要だ。政府にも、強いITの司令塔が欲しい。内閣府にあって、各省の調整に当たる、という現在の仕組みではスピードに追い付けない。ITに関係する省庁は増大してきている。以前は経済産業省、総務省の両省の再編成をと要望してきたが、国土交通省、農林水産省、厚生労働省、文部科学省などにも、統合してIT施策を推進すべき機能が散在している。
日本のIT社会は、依然としてトップを走っている部分があるとはいえ、多くの分野では先進諸国から後れてしまっている。各省庁に分散した、こういう機能を集約して、戦略的に政策を進めないと、先進諸国に差をつけられた分野では、いつまでもその差を埋められないのではないか。「IT省」「情報省」のような「省」の設立を要請する運動も、結束した業界の組織で推進するべきだ。
(以上 文責 中島)