情報技術は社会の透明性を向上させる

投稿者:nakajima 投稿日時:土, 2016-05-07 22:56

 高度情報社会は「透明性」が高まる社会である。
SuicaやPASMOなどの普及で「キセル」と呼ばれた不正乗車が激減した。乗車駅と降車駅が正確に記録されて不正の余地がなくなったからだ。タクシーの領収証もプリンターから打ち出されたレシートで受け取るようになった。昔は運転手の手書きだったが、ほとんどの運転手は書き込むのが面倒なのでは料金が書きこまれていない領収書を手渡した。自分で書き込んでくれと言うわけだ。水増しの数字を書き込むのは容易だった。しかし、メーターから直結するプリンターで打ち出されたレシートでは不正の余地はない。情報技術は透明性を高めて、人間に不正を働く余地を減らす効果がある。
小売業界でPOSシステムが導入された時にはレジ業務の生産性向上が目的のように言われたが、アメリカでの導入の目的は、レジ係のパンチミスの減少や不正の抑制だった、というのは有名なエピソードだ。情報システムが従業員の作業の透明性を高めた事例である。
 「節税」なのか、「脱税」なのか、意見の分かれる「タックスヘイブン」問題も、デジタル化された膨大なビジネスデータが流出したことで、検証がしやすくなった。資料の中に登場する企業や人名を検索エンジンでマッチングさせることで、解明作業の効率が飛躍的に上がった。それも世界各地の多数のジャーナリストが分担して、同時並行的に作業に当たる。
 「節税」を主張する人は「合法性」を強調するが、本当に合法なら正々堂々と行うはずだ。「絶対に秘密」を選んで依頼するのは、心に曇りがあるからか。今回のパナマ文書で、取引の「秘密を保証する」という神話は崩れたが、世界的に、テロやマフィアなど犯罪に関連するマネーの流れについて金融機関の秘密保持は許さないという傾向が強まっている。
 外国人の口座情報は当該国に報告し合う、という国際規約が100か国以上の参加で成立しそうだという。米国はこうした不正取引を開示するように、これまで顧客の情報には断固として開示を拒否してきたスイスの銀行に圧力をかけていたが、ついにスイスの銀行もこの要求に応じることになった。開示しない銀行にはアメリカから支店を追放する、と迫ったためだ。「節税」というのは、法律を変えれば、すぐに「脱税」になる。
 マイナンバーは個人の資産状況や所得を掌握して、税逃れを抑制する効果が上がると言われている。これも情報技術の向上で透明性が高まる分かりやすい事例である。パナマ文書がきっかけになって注目を浴びているタックスヘイブンでは、世界の税逃れの総額は数百兆円に達すると言われる。マイナンバーなどで、透明性が高まって納税の正常化が進めば、その増税効果は数兆円に上ると言われる。
 保育士の報酬の引き上げ、大学生の奨学金返済免除、消費税の引き上げ先送りなど、透明性が高まって正常に納税をする傾向に拍車がかかれば、その財源を充当したいところはたくさんある。情報システムは社会に正義と幸せをもたらす強力な道具であることを、改めて実感した。