税金の使い道を選ぶ~~「ふるさと納税」拡大を歓迎

投稿者:nakajima 投稿日時:金, 2016-09-16 17:12

 「ふるさと納税」が急速に広がっている。事実上の「寄付」なのだが、そのお返しにチョイスできる名産品が魅力で、寄付金額以上の名産品が得られる。とうとう、パソコンの工場を地元にもつ自治体はお返しの特産品メニューに「パソコン」を加えた。北海道の海産物や各地の農産物、名産の加工食品などの食品類だけではなく、工業製品も加わって「ふるさと納税」の魅力はどんどん増している。
 この制度は、これまでは居住地にしか支払えなかった住民税を自分の故郷をはじめ、これはという自治体に「寄付」として支払う、という仕組みだ。お返しに使う名産品はその自治体の生産物なので、寄付金を受けた自治体が地元の生産品を買い上げる、つまり、地元の生産物の域外販売を行うということである。
納税者の側では、その寄付の金額分相当を、所得税や住民税から控除する。つまり、税金の使い道を納税者が選ぶ、という「消費減税」に相当する。これを「投資減税」にまで広げられれば、納税者の税金の払い方の「多様性」が増す。何に使われているかさっぱり分からなかった現在の税金に代わり、納税者が期待する企業に資金を提供できることになれば、日本の経済社会はもっと活性化する可能性がある。
 「投資減税」が特定産業を大きく発展させた事例が米国にある。
 1980年代に米国西海岸では無数の風力発電所が設置された。
 西海岸特有の低い丘には延々と発電所のプロペラが林立した。10年間で数十万基が建設されて「自然エネルギー時代」の到来を実感させた。当時、日本経済新聞社で産業変化の最前線を取材していた筆者はカリフォルニアの風力発電所を訪れた。その記事は林立する壮大な風力発電所の遠景写真とともに日本経済新聞の第一面を飾った。恐らく、日本に風力発電の時代を予言する初めての報道だったと思う。30年も前の話である。
なぜ、こんなに劇的なブームが起きるのか。石油ショック後に米国は自然エネルギー利用を促進する振興策を展開した、というのだが、どんな策だったのか。
その秘密は、「自然エネルギー分野への投資をした個人は同額を所得税から控除する」という「投資減税」だった。当時、日本で通産省が行っていた産業振興策は、国民から集めた税金を、通産省のお役人や委員会などの手で、企業にばらまかれていた。しかし、納税者が「この企業」と思っても、通産省経由では、その企業に届かない。
米国の「投資減税」は、納税者は「この企業」と思ったところに投資をすると、その額の税金は控除されるので、税金を払う代わりに、直接、自分が見込んだ企業にお金を振り込むということになる。税金を行政経由で目標の企業に届ける(実際には届く確率はゼロに近い)間接的なものではなく、間接的な業務コストなしに、真水で目標の企業に資金を届けることになる。しかも、投資した企業が成功すれば配当や売却益のチャンスもある。有力な投資先として風力発電会社に資金が集まり、丘の上に続々と巨大なプロペラが林立した背景である。
日本に戻って、納税者が自由に税金の使い先、投資先を選んで直接に資金を回す仕組みができないかと模索したが、納税者から集めた巨額の資金を配る権限を得た官庁はその快感を手放すわけもなく、今日に至っているわけだ。
「ふるさと納税」で、税金の使い道を事実上自分で選べる(一部ではあるが)意識が定着すれば、次は「投資減税」に向いてゆくのではないかと期待する。