20万人のセキュリティ技術者をどう食べさせるか

投稿者:nakajima 投稿日時:日, 2016-11-06 01:00

 日本国内の情報セキュリティ人材の不足が深刻だ、というのは、国境を越えた「サイバー戦争」が一段と激化する中で、もはや常識である。経済産業省も2016年の時点で約13万人が不足し、2020年にはおよそ20万人近くが不足すると予測を発表している。人材育成策を急いで少なくとも20万人以上のセキュリティ技術者を育成したいと考えているわけだ。
 現在、考え得る危機的状況を打開しようとすれば、その通りだ。しかし、冷静に考えると、少なくとも20万人程度のセキュリティ技術者を食べさせるだけの「市場」が新たに創出されなければならない。給与の魅力がなければ人材は集まらないだろう。すると、少なくとも一人平均で500万円以上の報酬が必要だろう。
 500万円×20万人でざっと1兆円の給与を確保しなければならない。
 最前線の技術者を支える管理職者や総務部門、間接部門、各種の諸経費を考えれば、2倍の2兆円の資金が必要になる。新たに、年間2兆円を支出するスポンサーがいなければ人材育成しても働き口が確保できない。技術を磨いた上に働き口がなければ、一攫千金で大金を稼げるかもしれないブラックハッカーからの誘惑に乗ってしまう技術者が出て来るかもしれない。
 スポンサーになりうるところは政府が1つ。これは警察や防衛予算で支出すべきものである。国の中枢組織を守って、行政が崩壊しないように守るのは警察や自衛隊の責任である。物理的な警察予算、防衛予算から振り向けるのは無理である。新たにサイバー防衛予算項目を新設して巨額の予算を準備すべきである。
 もう1つは民間企業である。企業が事業推進や経営に必要な情報システムを守るのは、企業が財産を守る頑丈な金庫を準備し、また、施設や書類を守るために警備員を配置し、警備会社に経費を払って警備を委託するのと同じである。サイバーセキュリティのための投資は利益を生む投資ではない。しかし、警備会社に支払う経費も直接に利益を生むものではないが、必要不可欠なコストとして予算に組む。情報システムを守るセキュリティの投資は同様に考えるべきだろう。
 ただし、通常の警備に比べて、サイバーセキュリティの投資、ないし、経費は額が大きい。しかも、短期間に突然、出現してきた新規の予算だ。なかなか、納得して十分な予算を配分する意識転換はできないだろう。しかし、これは不可欠だということを啓蒙してゆかなければならないだろう。
 その啓蒙活動も社会の情報システムを支える情報産業界の責任だろう。自分たちのセキュリティ促進だけでなく、日本社会全体のセキュリティ促進。心を引き締めてとりかからなければならない。