北海道ソフトウェア事業協同組合 株式会社シーエスアイ 代表取締役会長 杉本惠昭様


注)左から2人目が杉本氏

会社を設立されたきっかけや現在に至るまでの苦労された点などをお教え下さい。

 1990年に会社を設立し、1996年にその札幌支店を分社独立させてできた会社が現在の当社です。前回の寄稿では、2001年に北海道で初めて東証マザーズ上場を果たした所までお話しました。今回は上場を決意したきっかけと、その後の成長の軌跡をたどってみたいと思います。
 上場決意のきっかけは、当時コア事業であった受託開発からの脱却を目指して開発を進めていた、電子カルテの開発資金不足でした。1999年4月、現経産省が真正性(改竄防止)、見読性(何時でも見られる)、保存性(保存性の確保)の3要素が守られる事を条件に電子カルテの使用を認めました。当時の弊社は、売上が10億円にも満たない企業でしたから、新製品は大手メーカーに先駆けて世に出す必要があったのですが、1億円を超える開発資金を融資してくれる銀行は現れませんでした。
 しかし私は、諦めずにやれる所までは進めようと社員には開発続行を指示していました。目標は2000年4月までの完成、ファーストユーザ様への導入です。それは大手メーカーよりも半年は先にリリースすることを意味し、一気に有利な立場を築けるという目算がありました。1年間耐えられるか、資金面では大変厳しい状況でしたが、何とか乗り越えようと試行錯誤していました。そんな時にJAFCOと出会い、ラブコールを送られた訳です。
 JAFCOとの出会いこそが「電子カルテ事業の成功」と「上場を目指す」という、二兎を追う志を目覚めさせたと言えます。この決断は、当時の親会社の社長から猛反対を受けました。そこで私は、一緒にやるべきではないと厳しい判断をくだし、袂を分かつ事を決意し資本関係を解消しました。そして計画通り、4月に電子カルテを導入してマスコミにも取り上げられ、まずは一兎を獲得したのです。
 さて、上場の方は、そもそも照準を合わせていたのはジャスダックでしたが、出たとこ勝負とばかりに1999年に誕生したばかりのマザーズ(ベンチャー企業など成長性重視の市場)に方針転換します。そして、JAFCOの出資から1年10ヶ月、野村證券に主幹事を依頼してから1年2ヶ月という異例のスピードで上場しました。そのため、当時「上場の暴走運転」などと揶揄されたものですが、これで二兎を得たということになります。
 その後、弊社は着々と事業を拡大し、私が上場に期待していた通りの大きな変化を実感しました。一方で、パブリックカンパニーとして開示やルール等の煩雑さを伴うようにはなりましたが、今ではこれが企業の本来の姿であると受け止めています。なにより、資本、業務提携の話は格段に増えましたし、採用面でも国公立の大学は勿論、有名校からの受験者が当り前となりました。将来を担う優秀な人材を確保できる様になったこと、これは会社の存続にかかわる重要な要素です。また、経営者の立場からすると、資金調達面における担保や保証が上場前に全て解除された点が大きなメリットです。以降も求められることはなく、大胆な政策が取れる環境が整いました。
 2007年10月には、JASPAと、北海道ソフトウェア事業協同組合を通して、情報化促進貢献企業等表彰において、経済産業大臣賞を受賞しました。これは、社員が遣り甲斐と誇りを持てる大変栄誉な出来事でしたし、組合に加盟していたからこその受賞と感謝している次第です。その後、マザーズ市場は当時話題になっていた企業の不祥事が続いた背景などから、「上場後10年間で卒業」という制度が新設され、猶予期間を含めると13年目には東証2部か1部への市場替えが求められる状況となりました。
 弊社は何時も受け身にならず、前へ前へと進むことを信条としています。ですから、この時も2部に行くというお決まりの選択はせず、1部にチャレンジする方針を固めます。そして、準備からおよそ1年後の2014年10月、東証1部への市場変更を果たすことができました。その年の株主総会後の懇親会で、株主の皆様に東証の鐘を叩く小槌を手に持って貰い、一緒に記念撮影をして喜びを分かち合えた時は感無量でした。

 弊社の電子カルテシステム「MI・RA・Isシリーズ」は、EX、PXと進化を遂げ、昨年8月には新製品の「MI・RA・Is/AZ(All Zone)」を発表し、医療分野だけではなく介護等と連携するシステムへのさらなる躍進を宣言しました()。現在、(株)CEホールディングスの傘下には、事業の中核をなす(株)シーエスアイを中心に、(株)エムシーエス(株)システム情報パートナー(株)ディージェーワールド(株)Mocosuku、計5社のグループ企業があります。また、2012年5月には(株)駅探(マザーズ上場)と資本業務提携し、持分法適用関連会社となっています。
 現在の弊社は、「人は心に活き心に動く、人こそ企業なり」の理念にのっとり、売上100億円、時価総額100億円、電子カルテ1000ユーザを目標に掲げ、全社一丸となって奮闘しているところです。しかし、仕事には息抜きも大切です。実は、社長室エリアの一画に、その名も「President Club」という社内バーを設けました。(写真参照)役員や社員と一杯やりながら、夢を語り日々の疲れを洗い流し、明日から頑張ろう!と気合いを入れ直す場になっています。ちなみに店名は、若い社員がここで酒を酌み交わし「私も将来社長になるんだ!」と、自分の夢や会社の未来について語って欲しい…そんな私の想いを込めて命名しました。